皆さん、新学年も始まり数ヶ月が経ちましたが、新しい生活にも慣れてきた頃ではないでしょうか。
さて、時々、国語の勉強法が分からないとのことで質問を受けることがあります。国語の成績を上げようと思うと『国語力(文章を読む力)』が必要になってきますが、この『国語力』とは何かについてお話をしたいと思います。少し難しい話になりますが、気になる方は読んでみてください。

例えば、「本を読む」という文字の並びがあります。普段意識することは少ないと思いますが、「本」という文字、これ自体に本という意味はありません。外国の方が見られたら、ただの記号です。この何の意味も持たない記号を見て、我々は「本」だと認識し、「本を読む」と頭の中で理解しています。

では、どのようにして理解しているのでしょうか。

皆さんが本を読むときに行う黙読は、目で読むことになり、脳内における視覚情報の処理を行う視覚野を使っていることになります。しかし、意外なことは黙って読んでいるにも関わらず、聴覚に関わる大脳皮質の聴覚野や音声言語を理解する役割を担うウェルニッケ野という脳の一部も働かせていることです。

つまり人は、単なる記号である「本」を「ほん」と音に変えて、意味を理解しているということになります。もっと言えば、『音に変えないと、意味がほとんど理解できない』ということにもなるでしょう。

例えば、国語が苦手で問題文を読んでも文章が頭の中に入ってこない人は、文章を読んでいるようで読んでいない。言い換えれば、目で追っているだけで音に変えて意味を理解していない。つまり『読んだ気になっている』だけなのです。

大雑把に言うと、英語や国語などの言語科目が苦手な人は、この記号を『音として理解する力』がまだまだ不足しているかもしれませんね。

でも、今はまだ国語が苦手だと思っている人も大丈夫です。訓練することで『国語力』は向上します。

では、どのようにして鍛えるのか。その1つの手段として、昔から重要と言われているのが『音読』です。小学校でも、授業や宿題でやったことがある人も多いのではないでしょうか。

『音読』は、目で見た文字を直接声に出して、音に変えていくことになるので、国語力を鍛えていく有効な手段となります。脳科学の第一人者でもある川島隆太さんも、「音読しているときほど脳全体を使っている状態を見たことがない」と表現されています。

例えば、公開テストの読解問題が難しく苦労したのであれば、その文章を音読してみてください。このときに、注意するべきことは、

①自分が理解できるペースで読むことです。小声でもいいので、声に出して読み、自分が理解できるペースで読むことが出来れば、その後、黙読に切り替わっても理解できます。
②ゆっくり読んでも分からないような難しい文章の場合は、前提となる文章に出てくる用語の意味を知らない可能性がありますから、わからない用語を自分で調べてみましょう。

これを同じ文章で、何回も繰り返してみてください。読む回数が増えるにつれて、理解も深まり、今まで気づかなかったところにたくさん気づいていけるはずです。そして『音読』を通して文字を音として理解する力が付いていけば、他の文章を読んでも理解できる度合いが高まっていきます。『国語力』を高めたいと思っている人は、是非、試してみてください。