今回は、数学科 N先生の高校生時代の話です。


空港を降りて都市に出ると、熱帯特有のカラフルなオブジェ、日本と明らかに異なる気温、湿度、香り…異国情緒あふれる雰囲気に、鼓動が高鳴りました。シンガポールは華僑が多く、現地の人々は英語か中国語のいずれか、もしくは両方の言葉を自然に話していました。日本という国で、日本語だけで生活していた私は、人々の生活にごく自然に2つの言語が使われている様子に大変なカルチャーショックを受けました。

今回は、当時高校2年生、私がシンガポールとマレーシアに修学旅行に行ったときのお話です。私は海外旅行の経験が全くなく、出発前は期待と不安が入り交じり、なんとも落ち着かない日々を過ごしていました。どたばたと家中を駆け回って旅行カバンにあれやこれやと詰め込み、2日前に準備完了! 日本とシンガポールはほとんど時差がなく、約5時間の旅路を経て到着しました。

ここからドキドキの修学旅行が始まったわけですが、出発前の不安はすべて吹き飛んで、楽しい日々を送ることができました。それは、シンガポールという国が素晴らしい場所であり、街も良し、食べ物も良し、何より交流した現地の人たちや学生が気さくで優しい人たちだったからです。

私の通っていた高校はシンガポールに姉妹校があり、修学旅行の一環としてその高校を訪問しました。姉妹校の生徒たちは、日本から来た私たちをとても見事な歌や踊り、ダンスで歓迎をしてくれました。私たちはお返しに、日本のお家芸の柔道や剣道を見せました。思い返してみると、我ながらダサ…いや、男らしくて、かっこよかったですよ!

旅行中は様々な体験をしましたが、ときが過ぎるのは早く、あっという間に帰国の前日です。その日、姉妹校の生徒がお別れ会を開いてくれました。彼らは、初日に見せてくれた歌や踊り、ダンスよりもさらに華やかなパーティをしてくれました。ところが私たちには、あのダサ…いえ、男らしい柔道・剣道以外に見せる出し物がありません!

そこで、引率に来ていた教頭先生が急遽招集をかけました。教頭先生は学級委員長に「歌が歌えたり、楽器を演奏できたりする人を集めてくれるか」と声をかけ、私にも声がかかります。300人の大観衆です。どうしよう、できるやろか…と一瞬悩みましたが、5秒で決断! 最終的にギター2本とドラムとボーカル、4人の即興バンドが結成され、その4人の中の1人が私でした。

打ち合わせと練習時間は15分、選んだ1曲は、たくさんの人が知っているビートルズの「Twist&Shout」(知ってるかな?)です。当時、英語の勉強のため洋楽を聴きだしたことが功を奏しました。しかし、そのときはそんなことも考える余裕もなく、いきなり300人を前にしたステージで演奏が始まります。1曲限定の即興ライブは大変な盛り上がりで、日本とシンガポールがひとつになりました!(おおげさ…?) 曲が終わっても鳴り止まない拍手、歓喜の声、先生も生徒もスタンディングオベーション…なぜか同級生にも握手を求められることに。帰国後も「あの曲のタイトル教えて?」とたくさん聞かれ、長らく校内で語り継がれる伝説のライブとなったのでした!


この経験は、いつもと違う環境や新しい出会いの中で生まれた、特別な感覚なのかもしれません。しかし私にとっては、20年以上たった今でも鮮明に覚えている、人生最大の感動のひとつです。

1つでも多くの感動を、生徒の皆さんにも体験してほしい、そのためには高校時代の私のように、思い切って何かを決断してみることです。この夏は、馬渕教室での勉強を通じて、たくさんの出会いと感動を体験してみませんか?